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国連の特別報告者「ケナタッチ氏」は、どんな仕事をする人なのか?

ひとつ前のエントリーでは国連の特別報告者・ジョー・ケナタッチ氏の略歴について拙訳を示した。そこで今回はケナタッチ氏がどのような職務を負っているのかについても紹介しようと思う。

ソース元について

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本記事は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の提供している下のリンクの記事をそのまま翻訳したものである。
リンク:Special Rapporteur on the right to privacy

これを読めばケナタッチ氏の負っている職務の性質がどのようなものなのかを理解していただけるだろう。
以下、前回同様に原文と日本語訳を交互に示す。

翻訳

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序文:
A Special Rapporteur is an independent expert appointed by the Human Rights Council to examine and report back on a country situation or a specific human rights theme. This position is honorary and the expert is not United Nations staff nor paid for his/her work. The Special Rapporteurs are part of the Special Procedures of the Human Rights Council.
特別報告者は人権理事会によって氏名される独立した専門家であり、特定の国の情報や、特定のテーマの人権について報告するものです。特別報告者の地位は名誉的なものであり、国連のスタッフとしては扱われず、また報酬も支払われません。また特別報告者の職務は人権委員会の特別手続の一部をなすものです。

Introduction(紹介)
In July 2015, the Human Rights Council appointed Prof. Joseph Cannataci of Malta as the first-ever Special Rapporteur on the right to privacy. The appointment is for three years.
2015年7月、人権理事会は、マルタ出身のジョセフ・ケナタッチ氏をプライバシー権にかかる最初の特別報告者に指名しました。任期は三年です。

Mandate(授権)
The Special Rapporteur is mandated by Human Rights Council Resolution 28/16:
人権理事会の決議28/16により、特別報告者には下記の権限が授権されています。

(a) To gather relevant information, including on international and national frameworks, national practices and experience, to study trends, developments and challenges in relation to the right to privacy and to make recommendations to ensure its promotion and protection, including in connection with the challenges arising from new technologies;
プライバシー権に関する国内的・国際的な枠組みについて、また各国のプライバシー権保障の実態と経験について、それぞれ情報を収集すること。また各国における権利保障の動向を調査し、プライバシー権の保障がどの程度進展しているか、またその保障にどのような課題があるかについて研究し、新しい技術の開発によって生じる課題などに関するものを含めて、プライバシー権のより確実な保障を推し進めるための答申を行うこと。

(b) To seek, receive and respond to information, while avoiding duplication, from States, the United Nations and its agencies, programmes and funds, regional human rights mechanisms, national human rights institutions, civil society organizations, the private sector, including business enterprises, and any other relevant stakeholders or parties;
各国の政府機関、国連の下部機関、各種の実施プログラムや基金、広域的な人権保証機構、各国の人権機関、市民社会組織、営利企業を含むその他の私的部門、およびその他の利害関係人や団体から幅広く情報を収集し、重複している情報を整理しつつ、これらについて対応を行うこと。

(c) To identify possible obstacles to the promotion and protection of the right to privacy, to identify, exchange and promote principles and best practices at the national, regional and international levels, and to submit proposals and recommendations to the Human Rights Council in that regard, including with a view to particular challenges arising in the digital age;
プライバシー権の保障を推し進めるうえでありうべき障害を特定すること。また国際的、広域的、及び国内的なレベルにおけるプライバシー権保障の基本原則を策定するとともに、その権利保障の最良の実施方法を特定し、これらについて情報交換し、その保障を推し進めること。さらにこれらの点について、特にデジタル化した時代に特有の課題に関するものにつき見解をまとめ、人権理事会に提案や答申を行うこと。

(d) To participate in and contribute to relevant international conferences and events with the aim of promoting a systematic and coherent approach on issues pertaining to the mandate;
職務に関係する事案について一貫した組織的アプローチを推し進めるため、関連する国際会議やイベントに参加し、もしくは文書などを寄稿すること。

(e) To raise awareness concerning the importance of promoting and protecting the right to privacy, including with a view to particular challenges arising in the digital age, as well as concerning the importance of providing individuals whose right to privacy has been violated with access to effective remedy, consistent with international human rights obligations;
デジタル化した時代に起こりうる特有の課題にどう対処すべきかについて、また個人がプライバシー権を侵害されてしまった場合に国際的な人権保障の義務に沿った効果的な救済手段を提供することの重要性について、それぞれ人々の意識を高めること。

(f) To integrate a gender perspective throughout the work of the mandate;
職務に関する活動を通じて、ジェンダーに関する統一的な見解をまとめること。

(g) To report on alleged violations, wherever they may occur, of the right to privacy, as set out in article 12 of the Universal Declaration of Human Rights and article 17 of the International Covenant on Civil and Political Rights, including in connection with the challenges arising from new technologies, and to draw the attention of the Council and the United Nations High Commissioner for Human Rights to situations of particularly serious concern;
世界人権宣言12条、これにもとづく市民的・政治的権利に関する国際規約17条に定めるプライバシー権につき、新しい技術によって生じる人権上の課題に関するものを含めて何らかの侵害が申し立てられた場合、その人権侵害が発生した場所にかかわらずこれを報告し、人権理事会の注意を喚起すること。また特に深刻な懸念については国際連合人権高等弁務官事務所の注意をも喚起すること。

(h) To submit an annual report to the Human Rights Council and to the General Assembly, starting at the thirty-first session and the seventy-first session respectively.
第71次国連総会と、第31次人権理事会にそれぞれ年次報告を提出すること。

最後に

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2017年5月22日の記者会見で菅官房長官は、「特別報告者は独立した個人の資格で人権状況の調査、報告を行う立場であって、国連の立場を反映するものではない」と主張し、「書簡の内容は明らかに不適切なものであるため、強く抗議を行っている」と発表したそうだ。
※関連記事へのリンク:国連特別報告者が日本に「共謀罪」懸念の書簡 菅義偉官房長官「明らかに不適切な内容で強く抗議」(産経ニュース)
※参考リンク:国連特別報告者の首相宛て書簡(中日新聞)

確かに特別報告者の任務は個人の資格のもとで行われるものであり、その報告はかならずしも国連の立場を反映するものではない。この点では菅官房長官は正しいことを言っている。しかし、プライバシー権がどのように保護されているかについて政府機関から情報収集を行い、かつこれに対応するのはケナタッチ氏に授権された権限の性質からして当然のことのように見える。

そもそもケナタッチ氏が個人だというのであれば、政府に対して「この法律ではプライバシー権が守られていない。プライバシー権をもっと守れるような手段を講じて欲しい」と陳情するのは当然に個人的意見として認められるべきものであろう。何ら非難されるべきものではない。

果たして政府は何を不適切と考え、何に抗議しているのだろうか。甚だ疑問である。
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