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国連の特別報告者「ケナタッチ氏」ってどんな人?

ここ数日、国連の特別報告者であるジョー・ケナタッチ氏が共謀処罰規定を含む組織犯罪処罰法改正案を批判したとされるニュースが話題になっている。しかし実際のところ筆者はこの人物がどのような人物であるのかを良く知らない。

ケナタッチ氏の主張が正しいかどうかを判断するにあたっては、まずこの人物がどのような背景を持つ者であるかについての情報を得ておく必要があると思う。そこで本稿ではこのケナタッチ氏がどのような来歴の人物であるかを調べてみることにした。

調査方法

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調べる、といってもやることは簡単である。
下のリンクのページで国連の人権高等弁務官事務所が同氏のプロフィールを紹介してくれている。
リンク:Biography of Joe Cannataci, Special Reporteur on the right to privacy

つまり、この文章を日本語に翻訳すれば同氏の略歴が得られるはずである。
と、いうわけで以下の項目では原文と訳文を交互に示す。

翻訳

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Biography of Joe Cannataci, Special Rapporteur on the right to privacy.
プライバシー権についての特別報告者、ジョー・ケナタッチ教授の略歴。

Prof. Joe Cannataci was appointed UN Special Rapporteur on the right to privacy in July 2015.
ジョー・ケナタッチ教授は2015年にプライバシー権に関する国連の特別報告者に指名された。

He is the Head of the Department of Information Policy & Governance at the Faculty of Media & Knowledge Sciences of the University of Malta. He also holds the Chair of European Information Policy & Technology Law within the Faculty of Law at the University of Groningen where he co-founded the STeP Research Group.
現在ケナタッチ教授はマルタ大学の「メディア&ナレッジ科学学部」における「情報政策&統治学科」の学科長である。同氏は「ヨーロッパにおける情報政策と技術法制」に関する講師として、フローニング大学法学部の教授職を保持しており、また同大学のSTeP調査グループの共同設立者でもある。

An Adjunct Professor at the Security Research Institute and the School of Computer and Security Science at Edith Cowan University Australia a considerable deal of Joe’s time is dedicated to collaborative research. He was overall co-ordinator for the SMART and RESPECT projects dealing with surveillance and currently also co-ordinates MAPPING dealing with Internet Governance.
ケナタッチ氏は、オーストラリアのエディス・コーワン大学のセキュリティ調査研究所、及び同大学の「コンピューター&セキュリティ科学学部」の助教授としてかなり長い期間共同調査に携わった。また同氏はかつて調査監視を扱うSMARTプロジェクト、及びRESPECTプロジェクトの総合統括者でもあった。氏は現在はインターネット・ガバナンスを扱うMAPPINGプロジェクトの統括者を務めている。

A UK Chartered Information Technology Professional & Fellow of the British Computer Society, he also continues to act as Expert Consultant to a number of international organisations.
イギリス政府に公認された情報技術専門家であり、また英国コンピュター学会の研究員でもある教授は、多くの国際機関の専門相談員として活動を続けている。

He has written books and articles on data protection law, liability for expert systems, legal aspects of medical informatics, copyright in computer software and co-authored various papers and textbook chapters on self-regulation and the Internet, the EU Constitution and data protection, on-line dispute resolution, data retention and police data. His latest book “The Individual & Privacy” is published by Ashgate (March 2015).
ケナタッチ氏はデータ保護法、専門家システムの利用における責任の所在、医療情報学に関する法的問題、コンピュータ・ソフトウエアの著作権などについて著作を持ち、また共著者として「インターネットと自己制御」「EUの政治体制とデータ保護」「オンラインの紛争解決」「警察におけるデータの保持・保存方法」などのテーマについて報告書や教本に多くのテキストを残している。彼の最新の著作は2015年3月にアッシュゲート社から出版された「個人とプライバシー」である。
※専門家システムとは医師や弁護士、弁理士といった専門家知識をコンピューターから検索できるシステムのこと。

In 2002 he was decorated by the Republic of France and elevated to Officier dans l’ordre des palmes academiques. His pioneering role in the development of technology law and especially privacy law was cited as one of the main reasons for his being made the recipient of such an honour as was his contribution to the development of European information policy.
ケナタッチ教授は2002年にフランス政府によって教育功労章の第二位にあたるオフィシエの勲章を授与されている。同氏は、技術関係の法規範や、特に個人のプライバシー保護を目的とする法制度の制定においてパイオニア的な役割を果たすとともに、またヨーロッパの情報政策の発展に貢献した。このことが同氏が勲章の受賞者となった主な理由である。

He has held or currently holds research grants from the British Academy, the Council of Europe, COST, UNESCO and the European Commission, totaling in excess of Euro 30 million. He serves on the editorial board of six peer-reviewed journals.
また教授は現在、イギリス学士院、欧州評議会、欧州科学技術研究協力機構、ユネスコ、欧州委員会から研究費補助を受けており、その総額は3000万ユーロを越える。また同氏は6つの専門誌で編集委員として論文査読に携わっている。


注釈

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訳文中に登場した固有名詞等についても、適宜注釈を加えておく。

国連人権高等弁務官事務所
Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights.
略称OHCHR。
世界各地における人権の保護・啓蒙活動を目的として1993年に設立された期間。
本部はスイスのジュネーヴにあり、職員数は500人余り。
参考リンク:国際連合広報センター:国連人権高等弁務官事務所

STeP
Security Technology and E-Privacy Research.
ヨーロッパの諸学部が連携してプライバシー、データ保護、セキュリティ科学、ネットワーク監視、サイバー犯罪の防止、情報の自主コントロール、健康情報学などに関する調査研究を行うプロジェクトのこと。
リンク:Security, Technology & e-Privacy Research Group

SMART
Scalable Measures for Automated Recognition Technologies
法執行機関による個人情報の自動収集手段についてヨーロッパ諸国で共通する基準を作成するための欧州委員会のプロジェクト。EUが資金を拠出している。
リンク:SMART: Scalable Measures for Automated Recognition Technologies

RESPECT
Rules, Expectations & Security through Privacy-Enhanced Convinient Technologies.
法執行機関が個人情報を扱う上での適正な手続を定めるためのEUのプロジェクト。
公安警察などの法執行機関はサイバースペースにおけるテロ資金の流通を把握することなどを目的としてネットワークを監視しなければならない。反面このような監視は個人のプライバシーを害するおそれがある。そこで個人情報を扱う上で適正な基準を定めるためにこのプロジェクトが立ち上げられたらしい。
リンク:RESPECT: Rules, Expectations & Security through Privacy-Enhanced Convinient Technologies.

MAPPING
Mananging Alternatives for Privacy Property and Internet Governance.
現在のインターネット・メディアの抱える多くの経済、社会、法的、及び倫理的な問題において統一的なガバナンスを形成・構築していくことを目的とするプロジェクト。
リンク:MAPPING: Mananging Alternatives for Privacy Property and Internet Governance.

教育功労章
1808年にナポレオン・ボナパルトによって創設された勲章。「パルム・アカデミック」の通称で呼ばれ、教育全般に功績のある人々に与えられる。上位からコマンドゥール(Commandeur:司令官)、オフィシエ(Officier:将校)、シュヴァリエ(Chevalier:騎士)の三等級があり、ケナタッチ氏が受章したのは中位の「オフィシエ」である。
参考リンク:在日フランス大使館:教育功労章

COST
European cooperation in science and technology.
日本語では「欧州科学技術研究協力機構」と訳される。
ヨーロッパ内外で諸学連携の研究ネットワークを形成するために資金を拠出するEUのプロジェクト。
リンク:COST

最後に

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この略歴から読み取れることはケナタッチ氏はサイバースペースにおけるセキュリティの問題や、個人のプライバシー権に関する問題について長く携わってきた専門家であるらしいということである。組織犯罪処罰法改正案に関連して同氏が日本政府に宛てた書簡も、人権保護制度の不備によって個人のプラバシー権が害されるのを危惧する内容のものであった。

この書簡については中日新聞が訳文を公開してくれているので、興味のある方はぜひご一読いただきたい。

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ZOA

Author:ZOA
実験記者。

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