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大阪府の試算した「カジノの経済効果」が、でたらめ。

大阪府は先月(2017年2月)に、平成28年度版の「統合型リゾート立地による影響調査報告書」なるレポートを公表した。しかし、筆者の目にはそこに記載されている試算の内容があまりにもでたらめに見えた。


そこで本稿では、この試算の内容について検証する。

内国人の集客数について

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まず下記の画像を見て欲しい。
これは件の「統合型リゾート立地による影響調査報告書」の8ページを抜き出したものである。



このページは夢洲にIR施設が建設された場合、2030年にどれだけの集客があるかの推計を求めるものである。

このページは上段と下段に分かれており、上段では日本人旅行客についての推計が、下段は外国人旅行客についての推計がそれぞれ算出されている。そこで、まず上段の「日本人旅行客についての推計」がなされている部分について検証してみようと思う。

まず上記画像の下線①の部分を見て欲しい。
この部分が、2014年~2015年の成長率となっているのに気づかれただろうか。

そう、たった1年である。
この2014年~2015年のあいだ、わずか1.2%旅行者客数が増えたからというだけの理由で、これか16年にわたって同じペースで大阪を訪れる日本人旅行者が増え続けるだろうと推定しているのである。これは、どう考えても無茶な話だ。

もちろん普通は、こういった「将来の見込数」を出す場合、少なくとも5年ぐらいの推移をみて、それを将来に類推するものである。単年度のみのデーターでは天候や気象などによる誤差の影響が大きくなってしまうからである。しかし、大阪府はなぜか2013年以前のデータは参照していない。

もちろん、2013年以前のデータが無いわけではない。国土交通省は2013年以前の旅行・観光消費動向調査の結果についても、きちんとホームページで公開している。2010年に同調査が拡充されてから、過去六年にわたる国内観光客数の推移は以下のグラフの示す通りである。

年度人数
2010631596
2011612525
2012612750
2013630950
2014595221
2014604715

しかし、どう贔屓目に見てもこのグラフは横ばいである。

国内観光客数は6年前と比べても増えるどころか、むしろ微減しているのだ。少なくともこのグラフの推移を見て、「これから毎年1.2%づつ観光客が増え続け、15年後には18%増になっているだろう」と考える人は誰もいないはずだ。

少子化によって子供の数は減少の一途を辿っている。現在は旺盛に旅行を楽しんでいる団塊世代も後期高齢者となる。彼らは、いずれ旅行どころではなくなるだろう。冷静に考えれば日本人の旅行者数がそれほど順調に伸び続けるとは到底思えない。しかし、試算はその「ありえない想定」にもとづいている。

また上記ページの下線②の部分では、シンガポールに来る旅行者の38%がIRを訪れるからというだけの理由で、大阪に来る観光客の38%がIRに来ると想定している。しかし、これもかなり杜撰な想定である。そもそも大阪府の面積はシンガポールの2.6倍程度と広い。土地面積が広ければその分だけ観光客は分散すると考えるのが自然である。来阪観光客の38%がIRを訪れるとするのは、かなり無理のある想定のように思える。
※大阪府の面積は1899㎢、シンガポールは約719㎢。

後述するが、大阪府の提出した試算ではシンガポールのMarina Bay Sandsを基準とする部分が多い。しかしMarina Bay Sandsはシンガポールの中心部にあり、マーライオンなどの昔から著名な観光地にほど近い場所に位置している。その点で、大阪の中心市域から離れた位置になる夢洲とはかなり条件が異なる。

そもそも成功例であるシンガポールのIRのみを想定して集客数を計算するのはご都合主義ではないか。

しかし、残念ながら、この日本人観光客の来客数に関する試算は、曲がりなりにも過去の実績値を使用して議論しようとしているだけ、まだしもマシな方なのである。次に紹介する「外国人観光客の来客数」にかかる試算の内容は、これよりさらに酷い、ほとんど妄想といって差支えのない数字である。

外国人の集客数について

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外国人旅行者の集客数にかかる推計は、下記画像の下段部分でなされている。



通常、新規に建設する店舗の集客見込数を割り出したい場合、どのような方法がとられるだろうか?
一般的には、これまで建設された同種施設の実績値などを使用するのではないだろうか?

しかし、大阪府は試算にあたり一種独特の方法を採用している。上記画像の下線①の部分を見て欲しい。何と大阪府は、外国人観光客の集客の試算をするとき目標値を根拠としているのである。しかもこの「目標」の出典は大阪府・大阪市の作成した大阪都市魅力創造戦略2020なる文書である。

つまり、そもそもの数値目標自体も、他ならぬ大阪府自体が作ったものである。要するに、大阪府は「外国人観光客を1300万人にしたい」という目標を元に、集客数を試算しているというわけだ。もはや杜撰とかいう形容で許されるレベルではない。物凄い話である。

この計算方法で行けば、もし大阪府が「2020年に1億3000万人の観光客を集める」という目標を立てたら、それだけで集客見込数は7410万人に跳ねあがる。13億人の観光客を集めるという目標を立てれば7億4100万人になる。目標を増やすだけでよいのだから幾らでも集客見込数は増やせる。

何かの冗談なのだろうか。およそ試算の体を成していない。

上記画像の下線②の部分では「毎年4.1%」づつ10年間にわたり訪日旅行者数が増え続けることになっている。しかし、これもやはり首相官邸と官公庁が出した「明日の日本を支える観光ビジョン」の目標値を根拠とするもので、実績値に基づくものではない。

大阪のIRがそんなに儲かるというならば、諸外国も外貨獲得のため自国のIRを拡充する可能性が高い。大阪のカジノだけが右肩上がりで来客数を増やすなどということは常識で考えればありえない。しかし、この試算ではこういったことにはまるで触れようとしていない。

経済効果について

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前提となる集客見込数がでたらめな計算に基づいているのであるから、ここから導かれる経済効果の試算もでたらめなものにならざるを得ない。そのうえ、経済効果の試算は先述のMarina Bay Sandsや、MGM Grand Hotel and CasinoWynn Las Vegasなど交通アクセスの良好な都市部のIRの数値を参照して計算されている。
※MGM Grand Hotel and Casino, Wynn Las Vegasはいずれもマッカラン国際空港にほど近い場所にある。


※Google MapによるMarina Bay Sandsの空撮画像。赤丸の位置にマーライオンがある。


※Google Mapによる夢洲の空撮画像。上記写真と同縮尺。

空撮写真を見ても、Marina Bay Sandsは旧来の市街地や、シンガポールを代表する観光名所にほど近い場所に建設されているが、夢洲はそうではない。これから開発される夢洲のIRから、シンガポール中心部のMarina Bay Sandsと同等の直接経済効果が得られるとするのは、多少楽観的に過ぎるように思える。

最後に

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大阪府はこのレポートで、夢洲に建設されるIRは2030年に年2200万人の旅行者を集め、年6300億円の経済効果と7万人の雇用増をもたらすと豪語している。しかしながら、数字をひとつひとつ見ていくと、大阪府の提出した試算は「カジノ欲しさ」のあまりに現実からかけ離れたものになってしまっていると言わざるを得ない。

大阪府民の方々には、このような試算に騙されることなく冷静な判断を下してほしい。
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