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都道府県別の犬猫の殺処分数・殺処分率についてまとめてみた

筆者は平成27年度(2015年度)の統計における犬・猫の殺処分数、および殺処分率を都道府県別に集計した。本稿では、地域ごとの差異が分かりやすいよう、集計結果を彩度つきの表にして示す。

目次

▲PAGE TOP
とりあえず目次を置いておく。
手っ取り早く集計結果のみを知りたい方は、1、2を読み飛ばして3に進んで欲しい。

 1. 記事執筆の経緯
 2. データソース
 3. 犬の殺処分数・殺処分率
 4. 猫の殺処分数・殺処分率
 5. 合計の殺処分数・殺処分率
 6. 最後に

1.記事執筆の経緯

▲INDEX
日本はペット大国と呼ばれて久しい。日本ペットフード協会の推計によれば現在の日本では犬が約988万頭、猫が985万頭、あわせて2000万頭近い数のペットが飼育されているそうだ。少子化が進んで久しい現在の日本では、今やペットの匹数は子供の数を上回るらしい。
参考記事:ペットに犬、なお猫を上回る 業界の推計飼育数、微減(朝日新聞Digital)

こういったペット好きの人々にはある種の親バカに似た気質が多分にあるらしい。彼等はしばしば自分の飼っている犬猫の写真をSNSにアップロードする。それで筆者のツイッターのタイムラインにも、しばしばペットの愛らしい姿が載る。

しかし、そういった微笑ましいツイートが多い一方で、痛ましいものもある。
すなわち「殺処分になりそうな犬猫を誰か引き取って欲しい」とするものだ。

筆者はタイムラインを読み進めるうち、あることに気がついた。
犬猫の飼養を求めるツイートは、やたらに山口県、長崎県のものが多いのである。

これが東京都や大阪府であれば筆者は特に何も思わなかっただろう。人口が多い都道府県であれば、比例して無責任な飼い主が増えるのも無理はないからだ。しかし、山口県も、長崎県も人口規模は140万人強である。過疎とは言えないまでも人口が多い県とはいえない。

どうしてこれほどまでに山口県・長崎県のツイートが多いのだろうか?

筆者は人口の多い大都市圏ほど、ペットを無責任に捨てる人も多くなり、その結果として殺処分数が増えるのではないかと予想していた。しかしながら、実際に統計を調べてみた筆者は、その予想を完全に裏切るデータを目の当たりにしたのである。

2.データソース

▲INDEX
まず、データソースには厚生労働省の提供する犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容状況のPDFを使用した。

ただし、このデータは、管轄の問題から都道府県と、その都道府県内の指定都市・中核都市のデータが別々に計上されている。たとえば筆者が居住している埼玉県全体の殺処分数が知りたい場合、埼玉県自体のデータに、政令指定都市である「さいたま市」、中核都市である「川越市」「越谷市」のデータを加える必要がある。

また殺処分率も示されていないため、保護された幼齢・成熟個体の匹数を合計した上で比率を計算する必要がある。そこで筆者はまず表計算ソフトを用いて都道府県毎に必要なデータを集計しなおした。この作業に用いたファイルは、別のサイトにアップロードしてある。集計に使用したコンピュータの都合上LibreOfficeのODS形式であるが、その点はご容赦いただきたい。
※集計に使用したファイル:CatDogKillingH27.ods

3.犬の殺処分数・殺処分率

▲INDEX
まず、犬の殺処分数から示す。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄


上記をみて明らかなように香川県が圧倒的に多い。

過去数年のデータをみるかぎり、香川県は犬の殺処分数におけるランキング上位の常連である。香川県の殺処分数が高い背景には、気候が比較的温暖なため野良犬が繁殖しやすく、また山林と人家が近い餌が確保しやすいなどの事情があるようだ。
参考記事:殺処分率ワースト返上へ 犬の命 守れるのは人(Yomiuri Online)

しかし、香川県だけが飛び抜けた数字になっているのは、他の県はここ数年犬の殺処分数を減らしているからでもある。同じような条件の他県は殺処分数を減らしているのに香川県だけが2000頭前後のまま変わっていないため、結果的に香川だけが圧倒的な数字を残すことになってしまったのである。


参考:年度別の犬の殺処分数(平成27年度のワースト5県)

平成23年に2390頭の犬を殺処分していた熊本の処分数は、現在では263頭にまで減っている。
香川県の殺処分数だけが減らない原因には、やはり県政の怠慢があるのではなかろうか。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄

殺処分率についても、やはり香川県が突出しており、保護された犬の8割近くが殺される。逆に長野・鳥取・東京の三都県では殺処分率が5%を切る。このうち長野・東京は猫の殺処分率も低めであり、自治体や関係ボランティアの方々の努力が伺える。

鳥取は犬の殺処分率は低いが、後述する猫の殺処分率は非常に高い。

4.猫の殺処分数・殺処分率

▲INDEX
猫については、大阪・長崎・兵庫・山口といった西日本の県が上位を占めている。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄


ワースト1位の大阪については猫の殺処分数のみが異様に多い。
野良猫同士の繁殖で生まれた仔猫が保健所に保護され、そのまま殺害されてしまうケースが多いそうだ。
※外部サイトへのリンク:大阪府の犬猫殺処分

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄


保護された猫が譲渡・返還される率が低いことも、殺処分件数の多さに拍車をかけている。大阪は人口900万近くを数える大都市であるはずだが、平成27年における譲渡・返還は4126件中わずか418件でしかない。東京であれば保健所に保護された猫の半分近くが助かるが、大阪だと10匹に1匹しか助からない。

殺処分率のワーストは鳥取である。犬の殺処分率は低かったものの、猫の殺処分率は極端に高く100匹に1匹も助からない。人口が少ない地域であるため、生まれてしまった猫の引き取り手が見つかりにくいことも原因にあるのかも知れない。

殺処分率が最も低いのは神奈川であるが、それでも3割近くの猫が殺されてしまう。ただし神奈川の他、東京・埼玉などはそもそも保護される猫の数が人口比で明らかに小さい。おそらく保健所に保護される「前」にボランティアの方々が対処してくれるため統計の数字に表れないのではないかと思われる。

5.合計の殺処分数・殺処分率

▲INDEX
犬・猫合計でのワースト1位は長崎であり、ついで大坂・山口・香川と続く。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄


殺処分数が最も少ないのは福井県である。北陸の豪雪地帯であるためそもそも犬猫が繁殖しづらいのもあるが、盛んな猫の譲渡会などを通じて殺処分を減らそうとする関係者の努力が身を結んだ結果でもあろう。福井県は保護された犬猫の殺処分率もかなり低い。
参考記事へのリンク:犬・猫の殺処分 北陸3県なぜ少ない 里親「譲渡会」が奏功 /石川

人口密集地域であるはずの東京・埼玉・神奈川の少なさも目を引く。特に東京は全国1位の人口を誇るにも関わらず、殺処分数は47県中46位である。保育所に保護された動物が譲渡される割合もかなり高い。Twitterのタイムラインをみる限りでも、この地域は犬猫の譲渡会が最も活発に開催されている地域である。

西日本では岡山の少なさが注目に値する。同県は人口190万ほどを擁し、決して過疎県というわけではないものの、殺処分数は47県中45位とかなり少ない。西日本の府県は全体的に殺処分数が多い傾向があるが、そのなかで岡山県は比較的に低い。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄


殺処分率をみても岡山県は46位とかなり低く、統計上この県より低いのは神奈川県のみである。

6.最後に

▲INDEX
筆者がこの記事を書いた目的は、隣接する都道府県であっても、行政や地域住民の取り組みによって、その殺処分数に大きな差が生まれることを明らかにすることにある。同じ山陽地方であっても、岡山県と兵庫県にはその殺処分数・殺処分率にかなりの差がみられることは、これまで図示したデータから明白であろう。

たしかに、西日本は確かに犬猫の繁殖しやすい温暖な気候の地域であり、それゆえに殺処分数も増加するという理由には一定の理がある。しかしながら、同じような気象条件の隣接する県であっても、実際の犬猫の殺処分数には大きな差異がみられる。

これは、市民の意識や行政関係者の取組が、殺処分数の多寡に非常な影響を与えることを示している。
つまり、気象条件は言い訳にならないのである。
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