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最低賃金を1500円にするのに必要な値上げの幅を求めてみた。

2016年12月の初頭あたり、筆者が「カジノが犯罪を増やす」とする論文を翻訳している頃、東京ではエキタスというグループが「最低時給を1500円にせよ」と主張するデモを起こしていた。

最低賃金の引き上げには賛否両論がある。やはり個々人の生活に直接関わる事柄であるだけに関心度も高いのだろう。Twitterのタイムラインにも、このデモに関するさまざまな意見が流れていた。


そんな多種多様な意見のなかに、ひとつ筆者の目を引いたものがあった。



これは要するに、最低賃金があがると飲食店は大幅に値上げしなければやっていけなくなるというものだ。
実際、この種の意見はよく目にする。

しかし、筆者がこのとき疑問に思ったのは、その値上げの金額があまりにも極端だったからだ。つまり、いくらなんでも大げさでは無いかと思ったのである。筆者自身は飲食店で働いていた経験は無いが、それにしても1700円も2200円も値上げしなければならないとは思えない。

現状でも最低賃金は700円近いのだから、時給800円上げれば1500円に到達するはずである。アルバイトの時給を800円あげるのに、一品2000円前後の値上げが必要だろうか? そんなわけがない。さすがの筆者にも提示された数字がおかしいことはくらいはわかる。
参考:地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

しかし問題は、賃金を800円上昇させるためには商品の単価をどれぐらい上げなければならないのか、という点である。従業員の時給を大幅に引き上げた場合、それによる損失は商品の値上げで埋め合わせなければならない。しかしながら、必要な値上げの額を推測するのはなかなか難しい。

そこで本稿では、飲食店が従業員の時給を800円上げるのに必要な値上げ幅を計算していこうと思う。

人時売上高とは何か?

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ここで、筆者は人時売上高なる単語について説明しなければならない。
人時売上高は、飲食店の売上高を、その飲食店で働く従業員の延べ労働時間で割ったものである。

たとえば、あるサイトには一般的な飲食店の人時売上高は3000円から3500円ぐらいである旨が書かれている。もちろん、この人時売上高は、高ければ高いほどよい。この数値が5000円を超えれば非常に収益性が高い店舗であるらしい。

この人時売上高が分かれば、賃上げに必要な値上げ幅も分かる。

たとえば現在の人時売上高が3200円であるとする。値上げ分はそのまま店舗の収益になるから、従業員の給料を800円上げたい場合、これを4000円に引き上げれば採算が取れるはずである。4000を3200で割った商は1.25であるから、ざっと見て商品単価を1.25倍にすれば採算が取れるということになる。

つまり1杯800円の丼物を1000円にすれば、時給の引き上げ分を賄えるはずである。

もちろん、最初から人時売上高がもっと高い場合には、さらに比率は小さくなる。人時売上高が4000円の店では、時給を800円あげるには単価を1.2倍にすればいいし、人時売上高が5000円の店では1.16倍にすればよい。やはり「丼物を2500円や3000円にしなければならない」というのは大げさではないだろうか。

統計から人時売上高を求める

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先述のように、一般的な飲食店の人時売り上げ高は3000~3500円程度であるとされている。
しかし、これはあくまで根拠のない推測の数値である。

では、この推定値を根拠付ける統計的な数字はないものだろうか?

統計をいろいろと調べてみた結果、宿泊・飲食サービス業の売上高、従業員数は経済センサスに記載されていることが分かった。2012年度活動調査の確報によれば、宿泊・飲食サービス業の売上高は19兆9807億1100万円であり、従業者数は542万0832人とされている。

また、厚生労働省の毎月勤労統計調査が産業別の月間総実労働時間のデータを提供してくれている。その産業別総労働時間の統計によると、同年度の宿泊・飲食サービス業の労働時間は一か月あたり100.0時間であるから、年間の総労働時間は12倍して1200.0時間である。

売上高を「従業者数・労働時間の積」で割れば、同業種の人時売上高の平均を割り出せるはずだ。実際に計算してみると約3072円という結果が出た。やや低めではあるが、当初想定していた3000円~3500円の範囲には一応納まっている。おそらく妥当な数字だろう。

結論

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このような方法で求めた人時売上高の平均から、一般的な飲食店が時給を800円上げるために必要な値上げ幅を求めることができる。3872を3072で割った商は約1.26であるから、平均的な人事売上高をもつ普通の店では、商品単価を1.26倍にすれば時給を800円上げても採算がとれるということになる。

つまり、800円の丼物なら、だいたい1008円にすれば採算がとれるのではないだろうか。
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コメント

No title

人時売上高ってのは、ある状況において求められる値で、別の状況で当てはめられる数字ではないね。雇用規制によって強制的な値上げをされた場合、客から見れば質が変わらずに値上げされることになる。それでは、単に客が来なくなる。

消費者は、国内で作られたものを買うのではなく、国外で作られたものを買うようになるし、人間が作ったものではなく機械が作ったものを買うようになる。2000円値上げすれば成り立つというのも楽観的すぎて、2000円値上げしたら成り立たないよね。まともな経営者なら、店を畳むよ。

コメントありがとうございます。

確かにその値上げが可能かどうかは別の問題ではあります。

ただ採算が取れるような値上げ幅はどれぐらいだろうかを求めるとすれば、
だいたいこのぐらいの金額になるのではないでしょうか。

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ZOA

Author:ZOA
実験記者。

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