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参議院の議席を面積で分配してみると?

本稿では純粋に面積のみで参議院の定数146議席を配分したらどうなるのかについて、求めてみることにした。

目次

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 ・算出方法
 ・各都道府県の議席
 ・「国土の均衡ある発展」論への批判
 ・歴史的経緯
 ・北海道の一票の価値は小さかった
 ・札幌に一極集中する北海道の「民意」
 ・最後に

算出方法

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議席数の計算は、おおむね以下のような方法で行った。

1. まずその都道府県が日本の総面積(37,7972平方Km)の何%にあたるかを求める。
2. 次に総議席数(146)を求めた値にかける。
3. 算出された値を四捨五入にして整数にする。

ただし、このようにして求められた都道府県別の議席数の総和は147議席となり、本来あるべき議席数より1議席多かった。そこで、この1議席を減らすため、「四捨五入の際に最も多くの値を加算された」都道府県(※)を調べ、その県の議席数を減らして調整した。
※該当するのは鹿児島県であった。

各都道府県の議席

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このようにして求められた各都道府県の議席は、以下の図のようになった。

北海道
青森
秋田岩手
石川新潟山形宮城
福井富山群馬栃木福島
山口島根鳥取兵庫京都滋賀長野山梨埼玉茨城
広島岡山大阪奈良岐阜愛知静岡東京千葉
長崎佐賀福岡和歌山三重神奈川
熊本大分愛媛香川
鹿児島宮崎高知徳島
沖縄

まず東京・大阪・神奈川・埼玉といった面積の小さい大都市圏の議席数は1議席に転落する。
そのかわりに北海道は実に32議席を占めるようになり、東北も大幅に増えて26議席を占める。

人口で分けようが、面積で分けようが、鳥取は1議席のままである。たとえ面積比率で分けたとしても参院選における鳥取の議席が増えることはない。前回の参院選で「合区」がなされた中国・四国は全体で2議席づつ増えるため、その発言力は多少は増加するだろうが、北海道・東北が得るであろう圧倒的な発言力を考えれば誤差にすぎないともいえる。

関東が減る以上に東北・北海道の議席が激増するため、東日本(北海道・東北・北陸・中部)の議席は12議席増える。
もちろん、その分だけ西日本の議席は減ることになる。

「国土の均衡ある発展」論への批判

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実のところ、筆者がこうしたデータを持ち出してきたのは、国土の均衡ある発展を図るという理由で面積を加味して定数を分配するべきという主張に反論するためだ。
※参考記事:クイックVote第106回 「1票の格差」は許されますか(日本経済新聞)

筆者は埼玉県(※)に住んでいることもあって、こうした一票の格差容認論には極めて批判的である。つまり筆者は、本当に国土の均衡ある発展のために一票の格差が必要だというならば、北海道には32議席を配るべきではないか、と主張したいのである。
※2016年参院選における「一票の価値」が最も低いのは埼玉県だった。

もちろん「北海道の原野にはあまり人が住んでいないじゃないか。そこに32もの議席を配るのはおかしい」と思われる方もおられるだろう。しかし「国土の均衡ある発展のために人口の少ない地域にも多くの発言権を与えるべき」という理論をとる場合には、こうした反論をすることはできない。

彼らの論理に従うならば、たとえ北海道の原野であっても、人口がゼロでないかぎりは面積比において均等な議席を配らなければならないはずである。そうでなければその地域の人々は国土の均衡ある発展から取り残されてしまうはずだからだ。

人口の多い地域と少ない地域で一票の価値が同じであっては人口の少ない地域の人々が発展から取り残されてしまう。――こういう考え方が彼らの理論の根幹をなしている以上、究極的には面積比で均等に議席を割り振らなければならなくなるだろう。

北海道のような広いけれども人口の少ない地域は、彼らの理論からいえば一票の格差によって積極的に保護されるべき地域であるはずである。鳥取や島根は人口が少ないから国土の均衡ある発展のために一票の価値を高める必要があるが、北海道の過疎地域は人口が少なくても発展の必要は無いと言い張るのでは全く筋が通らない。

国土の均衡ある発展が論拠である以上、北海道だけが発展から取り残されるいわれはない。特定の地域だけを一票の格差によって保護し、その他の地域は無視するというのでは筋が通らなくなる。最終的には面積を基準として機械的に議席を割り振らなければ公平を確保することはできないだろう。

現実問題として、人口の集まりやすい地域と人口の集まりにくい地域というのはある。北海道のような厳しい気候の地は、明らかに人口の集まりにくい地域であるといえるだろう。そうした現実を無視して地域の均衡を図ろうとすれば、究極的には北海道の原野と東京の都心を同一に扱わなければならなくなるのだ。

歴史的経緯

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そもそも北海道に住む人々の多くは、明治政府が国策で募集した移民の子孫である。

かつて政府は北海道開拓使という官庁を設立し、この地への移民を奨励した。北海道を開発し、農業や鉱業の生産力を高めて日本の国力を高めるためには、北海道にある程度の人口が移り住むことが必要不可欠だったからだ。そして彼らの先祖が厳しい自然を切り開いて開拓・開墾してきた北の大地は、いまや一大農業基地となり日本の食糧自給率を支えている。
Wikipedia記事へのリンク: 開拓使

つまり北海道に住んでいる人々は、その多くが国土の発展のため敢えて厳しい気候の地に移り住んだ人々の子孫なのだ。もちろん、ロシアの南下政策から日本の国土を防衛するために屯田兵となった人々もなかには多かっただろう。彼らは温暖な気候の地に安穏と暮らしてきた人々よりも遥かに国土の均衡ある発展のために尽くしてきた人々なのだ。
Wikipedia記事へのリンク: 南下政策

国土の均衡ある発展のために一票の格差が必要だという立場に立つならば、まさにこうした人々の一票の価値は重くあってしかるべきであろう。しかし実際にはそうではなかった。

北海道の一票の価値は小さかった

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地域間格差の是正を理由に一票の格差を正当化しようとする人々は、しかし北海道の一票の価値が小さかった時期には決して声をあげようとはしていなかった。2013年の参議院選挙で一票の価値が一番小さかったのは他ならぬ北海道だった。東京でも大阪でもなく、もっとも人口密度が低い北海道の一票の価値が最も低かったのだ。

人口の少ない地域にも発言権を付与して国土の均衡ある発展を図るというのが彼らの主張であるならば、それこそ北海道の過疎地にこそ最大の議席を配らなければならないはずだ。しかし、これらの地域の面積が大きいという理由で、人口比率よりも多くの議席を配分せよと主張していた国会議員を私は知らない。

一票の格差に反対する人々はそれこそ半世紀以上前(※)から同じ主張と裁判を繰り返してきた。居住地に拠らず一票の価値は同じであるべきと繰り返し声を上げ続けてきた。
※参院選の一票の格差については、1964年(昭和39年)2月5日に最初の最高裁判決がなされている。

だが地域間格差の是正を理由に一票の格差を容認するべきだと主張する人々はそうではない。彼らは面積の大きい地域に配分される票数がどれほど小さくても、これまで選挙結果に異を唱えたことはない。彼らは単に自分たち住んでいる県の票の価値が減らされそうになって初めて、定数配分の基準に面積を加味しろと言いだしたに過ぎないのである。

本当のところ彼らにとって国土の発展などどうでもよく、都道府県の面積を持ち出したのは、ただ単に自分たちの既得権を守りたいがための方便にすぎないのだろう。少なくとも彼らは、「面積の大きい北海道にこそ票を手厚く配分すべき」などの主張をしていたことは一度も無いのだから。

札幌に一極集中する北海道の「民意」

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札幌市の人口は約196万人であり、これは北海道の人口の3割以上にあたる。
都道府県の中心地に人口が集中するのはどこの地域でも普通だが、北海道の場合は特に甚だしい。

これでは北海道の意見は、ほとんど札幌の民意で決まってしまうはずだ。一票の格差が必要だと主張する人々の論理によるならば、北海道の札幌以外の地域に住む人々の民意は、これによって圧殺されることになるだろう。こうした事態は国土の均衡ある発展を守る見地からは望ましくないことではないのだろうか?

人口の少ない地域の民意を尊重しろというならば札幌の民意だけで北海道全体の意思が決定されてしまう状態はおかしい。しかし、こういった現状を彼等は今まで無視してきたのではなかったか? こうした人々が少数民意の尊重のために一票の格差を容認しろと喚いているのだから、ご都合主義にもほどがあるといえよう。

定数の不均衡によって人口の少ない地域の発言権を確保する必要が本当にあるならば、当然これらの地域にも相応の議席を配らなければならない。しかし彼等はこれまで、そうした地域により多くの議席を配れと主張したことはない。当然であろう。結局のところ彼らの理屈は、定数不均衡によって得ていた過剰な議席を守るために無理やりに捻りだしてきた詭弁にすぎないのだから。

地域格差をなくすために一票の格差を容認しろという主張をする人々に「過疎地の民意が人口密集地の民意に埋もれないようにするべきという建前を本当に貫く気概があるならば、是非とも北海道には32議席を配れと主張するべきである。

自分たちの居住する地域の議席が減らされそうなときだけ地域の均衡ある発展やら少数民意の尊重やらを持ちだし、自分たちが居住していない過疎地域の民意は無視するという態度では決して国民の理解は得られまい。結局は自分のことしか考えていないのが見え透いているからだ。

最後に

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面積比による議席数を集計する際に使用したエクセルのファイルは、例により別サイトにアップロードした。
もし必要であればこちらからダウンロードしていただきたい。
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