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楽曲「Take me out to the Ball Game」の著作権、翌年消滅予定

Take Me Out to the Ball Game(邦題:「私を野球に連れてって」)は、前世紀の初頭から野球ファンのあいだで長く愛唱されている名曲である。
Wikipedia記事へのリンク: 私を野球に連れてって

メジャーリーグの慣習はこの曲を7回表の終了時に歌う慣習がある。同時に観戦で固まった体をほぐすために軽い運動を行うため、これをセブンス・イニング・ストレッチ(Seventh Inning Stretch)と呼ぶそうだ。
実はこの曲は日本での著作権切れが迫っている。具体的な日付でいうと2017年5月21日を持って曲の著作権は消滅する。歌詞の著作権はその後もしばらく存続するが、やはり2021年5月21日に消滅することになっている。

この記事を執筆するにあたり筆者はLMMS(Linux MultiMedia Studio)を使用してサンプルMP3ファイルを作成した。もちろん、このファイルも現状では下記のようなYoutube経由のアップロードという形式で公開しなければ著作権侵害となる。


しかし著作権が切れた後はわざわざYoutubeを経由しなくてもブログで直接公開可能になる。また場合によっては配布するゲームのBGMなどにも自由に使えるようになるだろう。

もちろん法改正や条約の変更により存続期間が延長されることもありうるので、使用するときはきちんとJASRACのサイトなどで著作権が消滅したことを確認してからにするべきである。訴えられても筆者は責任は取れない。
外部サイトへのリンク: 作品データベース提供サービス(JASRAC)

しかしなぜ、この曲の著作権はこんな中途半端な日付を以って満了するのだろうか? 歌詞にしろ、メロディにしろ、その他の著作物であるにしろ、通常著作権が満了するのは12月31日であるはずである。なぜこの曲の著作権は5月21日に満了するのか。本稿ではその理由を説明していこうと思う。

著作権の保護期間

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日本における著作権の保護期間は原則として著作者の死後50年(著作権法51条2項)である。
外部サイトへのリンク: 著作権法 (※法令データ提供システム)

第五十一条:  
① 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
② 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ)五十年を経過するまでの間、存続する。

ただし、その起算日は死亡した当日ではなく、翌年の1月1日から(著作権法57条)である。

第五十七条:  
第五十一条第二項、第五十二条第一項、第五十三条第一項又は第五十四条第一項の場合において、著作者の死後五十年、著作物の公表後五十年若しくは創作後五十年又は著作物の公表後七十年若しくは創作後七十年の期間の終期を計算するときは、著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する。

Take Me out to the Ball Gameの作曲者であるAlbert Von Tilzer1956年10月1日に死亡している。つまり原則に従えば1957年の1月1日から起算して50年後、つまり本来であれば2006年の12月31日を持って著作権が切れているはずである。
Wikipedia記事へのリンク: Albert Von Tilzer(※英語版)

しかし、実際にはこの曲の著作権はまだ満了していない。JASRACのホームページを検索してみても、この曲がまだパブリック・ドメインになっていないのは明らかである。これはなぜなのだろうか?
外部サイトへのリンク: 作品データベース提供サービス(JASRAC)

※検索結果のイメージ:

※2016年7月24日検索。著作権切れになっている場合PDと表示される。

戦時加算とは何か?

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実はこれは戦時加算と呼ばれる制度によって著作権の保護期間が延びていることが原因である。戦時加算とはサンフランシスコ平和条約に基づく制度であり、太平洋戦争の期間中に日本国が連合国民の著作権を保護していなかったとして、通常の保護期間に戦争期間を追加するもののことをいう。
Wikipedia記事へのリンク: サンフランシスコ平和条約 戦時加算

アメリカ・イギリスなど、連合国に属していた15カ国の国民が有する著作権の保護期間は、この戦時加算の制度により延長されるになっている。これにより戦争前に著作された作品については1941年12月8日(※)から、平和条約の発効日の前日までの実日数が著作権の保護期間に加算される。
※戦争期間中に著作された作品については著作権の取得日が起算日になる。

作曲者Albert Von Tilzerはアメリカ人であるから、この戦時加算の対象となる。そしてこの曲は戦争前の1908年に作曲されたため、戦時加算はフルに行われる。アメリカと日本との間に平和条約が批准されたのは1952年4月28日であるから、加算日数は3794日である。

つまり、Take Me out to the Ball Gameは、本来ならば2006年の12月31日をもって著作権が満了していたはずの作品であるが、この戦時加算によって3794日間存続期間が延長されるのである。つまり、この曲の著作権が満了するのは2017年5月21日となる

※日数計算は日数計算.comで行った。


つまり、この曲が日本で自由に利用可能になるのは来年の5月22日からだ。

歌詞について

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同曲の作詞者はJack Norworth氏であり、この人物は1959年の9月1日に死亡している。
Wikipedia記事へのリンク: Jack Norworth(※英語版)

Jack Norworth氏もまたアメリカ国民であるため戦時加算はフルに行われることになっている。したがって歌詞の著作権は2009年の12月31日から数えて3794日後、すなわち2020年5月21日に満了するだろう。

最後に

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戦時加算については同じく枢軸国であったドイツ・イタリアについては行われていない。そのため、この制度は日本にだけ不当な義務を課した一種の不平等条約ではないかとの批判がある。JASRAC等ではこの戦時加算義務の撤廃を求めているようだ。
外部サイトへのリンク: 戦時加算の撤廃要求(JASRAC)

果たしてこの戦時加算の制度が正当であるかについては筆者は論じない。しかし、戦時加算の撤廃によって多くの著作物が早期にパブリック・ドメインとして利用可能になるのであれば、日本の利用者としては歓迎すべきことであろう。これにより多くの著作物が早期に使用可能になることを筆者は期待している。
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