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年金の運用実績発表は意図的に遅らされているのか?


今日からちょうど1週間後、7月10日に第24回の参議院通常選挙が予定されている。ところが年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による年金積立金の運用実績の発表が選挙後の7月29日とされていることが野党に問題視されているらしい。


ニュースソースの引用

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問題の大まかな経緯は上で説明したとおりだが、補足のため日本経済新聞からソースを引用しておく。

公的年金の15年度運用成績、参院選後に発表か GPIF
2016/3/31 23:20
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による2015年度の運用成績の発表日が波紋を広げている。7月29日と例年より約半月遅くし、7月の参院選後になる可能性が高いためだ。15年度は世界的な景気減速の影響を受け、数兆円規模の損失が出る見通し。野党からは選挙に配慮して発表日を決めたとの声が出ている。

GPIFは31日、初めて運用成績の発表日を事前に明記した。これまでは大まかな時期しか明らかにしていなかった。16年度から変更する目的は「透明性の向上」としているが、額面通りに受け取る向きは少ない。野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリストは「5兆円台の損失が出る」と試算する。

過去5年間の発表日は全て7月上旬だ。民進党が31日に国会内で開いた会合では「損失隠しだ」と批判が噴出した。

独立行政法人のような公共性の高い機関においては、その職務の執行についても高い中立性が保たれる必要がある。野党側が批判しているように、GPIFが与党側に配慮して意図的に運用実績の公表時期をずらしたのであれば、たしかにそれは公共性・中立性に反する望ましくない事態であるといえよう。

調べ方

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公表日を調べるのにはウェブアーカイブを用いた。これは過去のホームページを収集・書庫化して保存しているサイトである。GPIFの運用実績は例年業務概況書によって報告されるため、アーカイブ化されたホームページから業務概況書が公表された日付を調べれば、それがおおむね運用実績の公表日ということになる
外部サイトへのリンク: WayBackMachine

調べた結果

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調べた結果は以下の表のようになった。
背景が薄い灰色になっているのは参院選のある年であるが、参院選が予定されているからといって特に公表日が遅くなるというわけではないようだ。

年度業務概況書の公表日年度業務概況書の公表日
平成12年度    2001年7月6日*平成20年度2009年7月1日*
平成13年度2002年7月31日*平成21年度2010年6月30日*
平成14年度2003年7月23日*平成22年度2011年7月6日*
平成15年度2004年7月22日*平成23年度2012年7月6日*
平成16年度2005年7月14日*平成24年度2013年7月2日*
平成17年度2006年7月20日*平成25年度2014年7月4日*
平成18年度2007年7月31日*平成26年度2015年7月10日*
平成19年度2008年7月4日*平成27年度(予定)2015年7月29日
※アスタリスクはWayBackMachineの該当ページへのリンクになっている。

なお、公表が一番早かったのは6月30日一番遅かったのは7月31日だった。
ちなみに平均するとだいたい7月13日に公表されるようだ。

また、推移をグラフ化すると、以下の画像のようになる。



結論

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たしかに2016年の発表は例年に比べ遅いほうに含まれるようだ。しかし過去の公表日と比較して飛びぬけて遅いというわけでもない。もちろん過去8年にわたって発表は7月の上旬かそれ以前になされていることを勘案すると、参院選に配慮して公表時期を遅らせたのではないかという疑念は捨てきれない。しかし、この結果からは運用損が政府批判につながることを忌避して意図的に公表時期をずらしたものと決めつけることもできない

最後に

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筆者は年金積立金を株式で運用することには懐疑的である。株価は外国の経済の影響を受けて大きく変動するものであり、株式による運用を増やすことは年金をこのような価値変動のリスクにさらしてしまうことになるためだ。もともと年金というのは老後に備えて生活を保障するものである。とすれば、こうしたリスクはできるだけ回避されるのが望ましいと思える。

ただし長期的にみれば株式による運用は大きな収益を上げている。2014年10月のポートフォリオの変更直後に大きな損失を出したようだが、それでも総合的な損益はいまだに大幅なプラスであろう。リスクを考慮しても積極的な運用をするのが正しいのか、リスクを回避した消極的な運用で構わないのかについては評価するものによっても判断が分かれるところだと思われる。

いずれにせよ運用の当否を判断するには国民に正確な情報が提供されることが不可欠である。GPIFによる公的年金の運用ポリシーは政府の政策に依拠するところが大きいのであるから、その政策の当否を判断するための材料は、できるだけ選挙の前に提示されることが望ましいはずだ。

筆者は決してGPIFが意図的に公表時期を遅らせたとの結論をとるものではない。しかしながら情報の公開時期が参院選後にずれこんだことについては筆者は批判的な立場をとる。国民が選挙の前に判断材料を取得できるようにするためにも、GPIFはできるだけ早期の情報公開を行うべきではなかったかと考えるのである。
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